【7月・8月・9月決算の法人へ】簡易課税の届出期限にご注意ください

該当するのは一部の会社のみ
2割特例を使ってきた法人のうち、7月・8月・9月決算の一部の会社には、この夏のうちに判断を終えなければならない期限があります。
しかもこの期限には、通常の申告期限と違って土日祝による翌営業日への繰り延べがありません。
原則として1日でも遅れると、その課税期間について簡易課税を適用できず、本則課税で申告することになります。
該当するかどうかは数分で判定できますので、まずはご確認ください。
1. 期限はいつか
対象となるのは、簡易課税の適用を受けたい事業年度が令和8年9月30日以前に終了する法人です。現在進行中のものは、次の3つに限られます。
| 決算期 | 簡易課税を受けたい事業年度 | 届出書の提出期限 |
|---|---|---|
| 7月決算 | 令和8年7月期 | 令和8年7月31日(金) |
| 8月決算 | 令和8年8月期 | 令和8年8月31日(月) |
| 9月決算 | 令和8年9月期 | 令和8年9月30日(水) |
今年はいずれも平日ですが、仮に土日祝であっても翌営業日にはなりません。通常の申告期限とは扱いが違うところです。
とはいえ、送信エラーや郵送方法の誤りがあると取り返しがつきません。期限日当日に対応する前提は避けていただくのが安全です。
2. 対象となる会社の条件
次の4つがすべて当てはまる場合に、この期限が問題になります。ひとつでも欠ければ、この夏の期限とは無関係です。
- 7月・8月・9月決算である
- 前事業年度に2割特例を適用して申告した
- 当事業年度から簡易課税の適用を受けたい
- まだ簡易課税制度選択届出書を提出していない
- そもそも簡易課税を選択できる状況にある
ひとつずつ補足します。
・決算期について。
判定の基準は決算月そのものではなく、簡易課税を受けたい事業年度が令和8年9月30日以前に終了するかどうかです。
結果として、現在進行中のものは7月・8月・9月決算に限られます。10月決算以降は、後述する通常の取扱いとなり、申告期限まで猶予があります。
・前事業年度の2割特例について。
ここが入口の要件です。前事業年度に2割特例を適用していなければ、そもそも今回の特例が働きません。
この場合は原則どおり、事業年度が始まる前までに届出書の提出が必要でしたので、当期からの簡易課税適用はできません。
・まだ提出していないかについて。
すでに提出している場合は問題ありませんが、届出書の「適用開始課税期間」欄の記載が当事業年度になっているか、念のためご確認ください。
ここが翌事業年度になっていると、当期には効きません。
・簡易課税を選択できる状況かについて。
次の2点を確認してください。
- 基準期間(前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下であること。
簡易課税制度そのものの適用要件です。2割特例が使えなくなる理由が「基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたこと」である場合、その金額が5,000万円を超えていれば簡易課税も使えず、本則課税しか選べません。 - 届出書の提出が制限される期間に当たっていないこと。
調整対象固定資産や高額特定資産の仕入れ等を行った場合など、消費税法37条3項により簡易課税制度選択届出書の提出そのものができない期間があります。
この5つ目は、期限を調べるより先に確認してください。提出できない状況であれば、期限がいつであるかは意味を持ちません
3. 本当に急ぐのはどんな会社か
5条件のうち、実務上いちばん見極めが要るのが3つ目です。
当事業年度についてまだ2割特例が使えるのであれば、この夏に慌てる必要はありません。
2割特例を適用しておけば、その次の事業年度については通常の取扱い(=申告期限まで提出可)が使えるため、判断を先送りできるからです。
つまり本当に急ぐのは、前期は2割特例を使えたけれども、当期は使えなくなった会社です。
典型的には次のようなケースです。
- 基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超え、2割特例の要件を外れた
- 特定期間の課税売上高または給与等支払額により、当期は免税事業者にならない
- その他、インボイス登録がなければ免税事業者となるという2割特例の要件を満たさなくなった
このいずれかに当てはまり、かつ第2章の5つ目の条件(簡易課税を選択できる状況にある)を満たし、そのうえで本則課税より簡易課税のほうが有利と見込まれるのであれば、期限までに届出書を提出する必要があります。逆に本則課税のほうが有利であれば、何もしないという判断で構いません。
高額特定資産などがある場合はご注意ください
調整対象固定資産や高額特定資産の取得等がある会社は、扱いが変わります。
これらの資産を取得した場合、2割特例が使えなくなるだけでなく、簡易課税制度の選択自体が制限されることがあります。
「2割特例が使えないから、急いで簡易課税の届出を出そう」という判断が、そもそも成り立たない可能性があるということです。
該当しそうな会社は、届出期限の判定に入る前に、簡易課税を適用できる期間であるかどうかの確認を先に行ってください。
順序を逆にすると、間に合わせようと動いた挙句に提出できなかった、ということになりかねません。
「急がなくてよい」場合も、判断自体は必要です
当期も2割特例が使えるなら期限に追われることはありませんが、判断を完全に先送りできるわけではありません。
次の点は並行して検討しておく必要があります。
- 当期について、2割特例・本則課税のどちらが有利か
- 翌期以降に設備投資の予定があるか(ある場合、簡易課税では消費税の還付を受けられません)
- 簡易課税は原則として2年間の継続適用が必要であること
- 事業区分とみなし仕入率が、実際の仕入率と比べて有利かどうか
4. なぜこんな期限になるのか
簡単に背景を説明します。
簡易課税制度選択届出書は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出しなければなりません。
ただし2割特例・3割特例を適用した事業者については、その次の課税期間について、後から提出しても間に合う特例が設けられています。
令和8年度改正により、この特例の期限が「翌課税期間に係る確定申告期限まで*に緩和されました。
数字を見てから簡易課税か本則課税かを決められる、という大きな緩和です。
ところが、この緩和が適用されるのは翌課税期間が令和8年10月1日以後に終了する場合に限られます。
令和8年9月30日以前に終了する場合は、従来どおり「その課税期間の末日まで」です。
7月・8月・9月決算がこの旧ルール側に残っているのは、そのためです。
10月決算以降は新ルールに乗るため、申告期限まで猶予があります。
条文の構造や、順延の有無が分かれる理由については、実務者向けに別記事で整理しています。
【関連記事】簡易課税制度選択届出書の提出期限|原則と特例の構造を条文から整理する
5. この期限は「一回限り」です
もうひとつ押さえておきたいのが、この期限に該当するのは各社につき最大で一度きりだという点です。
ある事業年度が令和8年9月30日以前に終了しても、その次の事業年度は必ず令和8年9月30日より後に終わります。したがって以後はすべて通常の取扱いに移ります。
9月決算法人を例にとると、次のように分かれます。
| 2割特例を適用した期 | 簡易課税を受けたい期 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 令和7年9月期 | 令和8年9月期 | 令和8年9月30日(水) |
| 令和8年9月期 | 令和9年9月期 | 令和9年11月30日(火) |
同じ会社でも、どの事業年度から簡易課税に移るかで扱いが変わります。
厳しい期限が問題になるのは令和8年9月期の一度だけで、それ以降は申告期限まで猶予がある通常の取扱いに戻ります。
「9月決算だから毎年9月30日が期限」と覚えてしまうと、翌期以降に不要な前倒しをすることになりますので、ご注意ください。
6. すでに期限を過ぎている可能性のある会社
6月決算以前の法人で第2章の4条件に該当していた場合、すでに提出期限を過ぎており、当事業年度は本則課税が確定しています。
過ぎてしまった期限は戻せませんが、当期の申告を本則課税で組み立てる必要があるため、早めに把握しておくことをおすすめします。
「簡易課税のつもりで期中処理をしていた」という状態が一番困りますので、経理方針の確認だけでも進めておきたいところです。
なお、この場合でも翌事業年度からの簡易課税は選択できます。
当事業年度中に届出書を提出しておけば、翌事業年度から適用されます(原則どおりの取扱いです)。
7. 個人事業者は対象になりません
念のため整理しておきます。
個人事業者の課税期間は暦年ですので、令和8年分は12月31日終了です。
令和8年9月30日より後に終了するため通常の取扱いに入り、提出期限は令和9年3月31日となります。
3割特例についても同様です。3割特例は個人事業者限定の制度であり、対象は令和9年分・令和10年分。
その翌課税期間は令和10年分または令和11年分となり、いずれも12月31日終了です。3割特例がこの厳しい期限に当たることは、制度上ありえません。
この夏の期限は、「法人 × 2割特例」だけに生じる経過的な取扱いとご理解ください。
おわりに
該当する会社は決して多くありません。ですが、該当した場合の影響は小さくないうえ、期限を過ぎてしまえば取り返しがつきません。
「前期の申告書に2割特例の○が付いているか」を確認するところから始めていただくのが早いと思います。
そのうえで当期も2割特例が使えるなら、今回の期限は気にしなくて構いません。
税理士事務所ウィルライトでは、消費税の申告方式の有利判定と届出のタイミング管理を含めてご支援しています。
判断に迷われた際は、期限前にお声がけください。名古屋を拠点に、全国リモートでも対応しています。
本記事は令和8年7月時点で公表されている法令・国税庁公表資料等に基づいて作成しています。個別の適用関係については、必ず最新の法令・通達をご確認いただくか、税理士にご相談ください。
▶ ご相談はこちら:[お問い合わせ]
