事業承継は何から始める?最初の3ステップを税理士が解説

事業承継は何から始めればいいのか──多くの中小企業経営者が抱えるこの悩みに、税理士が答えます。
結論からお伝えすると、事業承継の始め方として最初にやるべきは、自社株評価を含む「現状を数字で見える化すること」。
その上で承継方法を整理し、相談先を決める──この3ステップが最短ルートです。
「そろそろ事業承継を考えないと」と思いながら、何年も具体的な動きが取れていない経営者の方は少なくありません。それは決して怠慢ではなく、何から手をつければいいのか分からないという、構造的な問題が原因であることがほとんどです。
事業承継は準備期間に3~5年かかるとされ、株価対策・後継者育成・税務・法務・人間関係と、論点が広く複雑に絡み合います。だからこそ、最初の一歩を間違えると、その後の検討が遠回りになります。
そしてもう一つ、本記事で強調したい視点があります。ここ数年でAIやクラウド会計が普及したことにより、事業承継の進め方そのものが変わりつつあるということです。従来は「時間も手間もコストもかかるもの」だった承継準備が、いまは違う進め方ができるようになっています。
この記事では、事業承継の最初の3ステップと、DXによって何が変わったのかを、税理士の視点で解説します。
ステップ1:自社の現状を「数字」で把握する
事業承継の検討は、現状把握から始まります。ここで多くの経営者がつまずくのは、頭の中のイメージで現状を捉えてしまうことです。
最初に押さえるべき数字は、次の3つです。
- 自社株の評価額:相続税・贈与税の負担額を決める出発点
- 直近3〜5年の業績推移:株価の傾向と、今後の見通しを掴むため
- オーナー個人の資産構成:自社株が個人資産に占める割合(≒納税資金の問題)
特に自社株の評価額は、ご自身の感覚と実際の評価額が大きくズレているケースがよくあります。「うちの会社、そんな価値はないよ」とおっしゃる経営者ほど、評価してみると想定外に高くなる、というのは現場でよく見る光景です。
「年に1回の決算後だけ」から「月次でモニタリング」へ
ここで、従来の事業承継準備とDX時代の進め方の違いがはっきり出ます。
従来の進め方
- 株価の評価は年に1回、決算後3ヶ月程度かけて算出
- 業績の変動が株価に与える影響は、後から振り返って分かる
- 評価のたびにそれなりの工数とコストがかかる
DX時代の進め方
- クラウド会計のデータがリアルタイムで揃う
- 月次の試算表ベースで株価の概算を継続的にシミュレーション可能
- 業績変動 → 株価変動の関係をタイムリーに把握できる
- AIを組み合わせれば、シミュレーションのコストも大幅に下がる
「業績が良い年に贈与すれば株価は高くなる、業績が落ち込んだ年に動けば負担が減る」──この当たり前の事実を、過去の話ではなく今動かせる材料として使えるかどうか。これが、承継のタイミングを最適化できるかどうかの分かれ目になります。
ステップ2:3つの承継方法から選択肢を整理する
現状把握ができたら、次に「誰に・どう承継するか」の選択肢を並べます。
事業承継の方法は、大きく分けて3つです。
| 承継方法 | 特徴 | 主な準備期間 |
|---|---|---|
| 親族内承継 | 子・配偶者など親族に承継 | 3~5年 |
| 従業員承継(MBO等) | 役員・幹部社員に承継 | 3〜5年 |
| 第三者承継(M&A) | 外部企業・個人に株式譲渡 | 1〜2年 |
ここで重要なのは、最初から1つに絞らないことです。「長男に継がせるつもり」と決めていても、本人の意思や適性、業績の見通しによって最適解は変わります。
複数の選択肢を並列で検討し、それぞれのメリット・デメリットと税務インパクトを比較したうえで、絞り込んでいく流れが望ましい進め方です。
「複数シナリオの比較」がより現実的になった
これも従来は時間とコストの制約で難しかった作業です。
「親族内承継で進めた場合の納税額」「M&Aで売却した場合の手取り」「従業員承継でMBOを実施した場合の資金調達」──こうしたシナリオを並列で試算するには、それなりの工数がかかりました。結果として、最初から1つの選択肢に絞り込んで検討せざるを得ないケースが多かったのです。
クラウド会計でデータが整理されていれば、シナリオごとの試算もスピーディーに行えます。AIの活用も進んでおり、こうした比較検討のハードルは確実に下がっています。意思決定の前に複数の選択肢を比較できることの価値は、経営者にとって大きいはずです。
ステップ3:最初の相談先は「自社の数字を知る税理士」
事業承継には、税理士・弁護士・M&A仲介・金融機関・商工会議所など、さまざまな立場の専門家が関わります。それぞれ得意分野が違うため、最初に相談する相手を間違えると、その後の方向性が偏ります。
選択肢がまだ絞れていない段階では、会社の財務・税務を一番よく理解している税理士に最初に相談するのが現実的です。
日々の決算・申告を通じて自社の数字を把握している税理士であれば、株価評価の概算、税務インパクトの試算、そして必要に応じて他の専門家への橋渡しまで、入口の整理を一括で担えます。
事業承継に強い税理士を選ぶ3つのチェックポイント
相談する際は、次の3点を意識してみてください。
- 事業承継の実務経験があるか 相続税申告の経験だけでなく、株価対策・組織再編の支援経験があるか
- 親族内承継・M&Aの両方に対応できるか 特定の選択肢に偏った提案になっていないか
- クラウド会計やAIなどのツールに精通しているか タイムリーな把握とスピーディーな試算ができる体制かどうか
3点目はDX時代だからこそ加わった視点です。
紙の決算書ベースでしか動けない事務所と、クラウドデータをリアルタイムに活用できる事務所では、提案の質とスピードに差が出てきます。
まとめ:DX時代の事業承継は「早く・正確に・網羅的に」進められる
事業承継の最初の3ステップを改めて整理します。
- 自社の現状を数字で把握する(株価・業績推移・資産構成)
- 3つの承継方法から選択肢を整理する(親族内・従業員・M&A)
- 自社の数字を知る税理士に最初に相談する
これまでの事業承継の基本的な考え方は、いまも変わりません。ただし、進め方のスピード感とコスト、把握できる情報のタイムリー性は、ここ数年で大きく変わりつつあります。
「準備期間3~5年」という定説も、DXを前提にすれば、より短い期間で必要な検討を一巡させることが可能になってきています。「まだ早い」ではなく「いま動けば、より早く・より正確に判断できる」──これがDX時代の事業承継の現実です。
ウィルライトの事業承継サポート
ウィルライトでは、クラウド会計データを活用した株価シミュレーション、AI活用によるスピーディーな試算、そして長期的な承継計画の策定までを一貫してサポートしています。
「うちの会社の場合、何から始めればいいか」を整理したい経営者の方は、まずはお気軽にご相談ください。全国対応のリモート相談も可能です。
事業承継のご相談は以下より承っております。
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※本記事は2026年5月時点の情報に基づいて作成しています。
具体的な税務判断については、個別事情に応じて税理士にご相談ください。